公開日:2026年8月6日

2024年4月から施行されたトラックドライバーの時間外労働規制により、物流業界は大きな転換期を迎えています。ドライバーの長時間労働や深刻な人手不足といった長距離輸送における課題に対し、 「中継輸送」が有力な解決策として注目を集めています。本記事では、中継輸送の仕組みや導入のメリット、具体的な事例まで詳しく解説します。

中継輸送とは?

中継輸送とは、長距離の貨物輸送において一人のドライバーが最後まで運転するのではなく、中継地点を設置し、複数人のドライバーで分担して輸送する物流の仕組みです。長距離の輸送を複数人で分担することで、各ドライバーが「日帰り」で勤務できるようにし、ドライバーの労務負担を軽減することを目的としています。

2021年に国土交通省が実施した調査 によると、トラック事業者の約16%が中継輸送を実施しており、「興味はある」と回答した事業者を含めると半数以上(57%)が前向きな姿勢を示しています。物流業界全体で働き方改革への意識が高まる中、まだ道半ばではありますが、中継輸送は今後さらに普及が進んでいくと考えられます。

2024年問題と中継輸送

2024年4月から、トラックドライバーに年960時間を上限とする時間外労働規制が適用されました。いわゆる「2024年問題」です。 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」 によると、 トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均と比較して約400時間長いという結果が得られており、この規制の適用によって、長距離輸送におけるドライバーの長時間労働の改善は喫緊の課題となっています。 中継輸送はその有力な解決策として位置づけられています。

中継輸送を導入することで、各ドライバーの運転時間と拘束時間を短縮し、規制に対応しながら安定した輸送サービスを維持することが期待されます。

中継輸送の代表的な3つの方式

中継輸送には代表的な3つの方式が存在し、荷物の種類や輸送ルート、事業者の設備状況などに応じて選択されています。

ドライバー交替方式

中継拠点でドライバーだけが車両を乗り換えて交替する方式です。トレーラー * ではない通常のトラックでも実施可能で、拠点での車両交換作業の時間が短く、効率的な運用ができます。

*エンジンを持たない荷台だけの車両であり、トラクター(ヘッド)と呼ばれる車両でけん引する

トレーラー・トラクター方式

中継拠点でトラクター(ヘッド)を交換する方式です。トレーラーヘッドを運転するため、けん引免許を持つドライバー同士の交換が必要ですが、貨物の積み替えが発生しないため、交換作業は短時間でスムーズに進められます。

貨物積替え方式

中継拠点で荷物そのものを積み替える方式です。既存の輸送形態に近く導入しやすい一方で、積替えに時間がかかるため、貨物用パレットを活用した積み替えの事前準備などによる効率化が重要となるでしょう。

中継輸送を導入するメリット

中継輸送の導入は、ドライバー、運送事業者、荷主企業、そして社会全体にさまざまなメリットをもたらします。

ドライバー側のメリット

日帰り勤務の実現
長距離輸送を分担することで拘束時間が短縮され、身体への負担が大幅に軽減されます。「毎日家に帰れる」といった私生活の充実が期待でき、ワークライフバランスの向上につながるでしょう。

職業としての魅力向上
中継輸送の導入により柔軟な働き方が実現することで、若年層や女性といった多様な人材の関心を引き、将来的な人材確保の基盤を強化できる可能性が高まります。

運送事業者側のメリット

労働時間規制への対応
長時間労働を抑制し、時間外労働の上限規制(年960時間)への対応に繋がります。

人材不足の解消と業務最適化
労働環境の改善による人材確保が期待できるほか、宿泊を伴う長距離運行が減ることで、同一エリア内での複数往復や近隣拠点間の輸送にリソースを再配分するなど、車両およびドライバーの稼働効率の最適化に繋がります。

荷主企業側のメリット

安定した輸送力の確保
運送事業者の労働環境を改善することで、将来にわたって安定して荷物を運んでもらう体制を構築できます。複数の荷主を集約した共同配送として実施すれば輸送効率の向上も期待できます。

社会・環境面へのメリット

環境負荷の低減(CO2排出量の削減)
中継地点からの帰り荷の確保によるトラックの空車回送(荷物を積まずに走ること)の削減や、中継地点での荷物の集約によって、積載率の向上が進みます。これにより、無駄な燃料消費が抑えられ、結果としてCO2排出量の低減など環境負荷の軽減が期待できます。

物流システム全体の最適化への貢献
中継輸送の導入によって輸送網が効率化されることは、社会インフラとしての物流機能の維持に直結します。また、複数事業者の連携による物流の効率化を図る事業計画に対する、 「物流総合効率化法」に基づく認定 を受けることで、自社だけでなく日本全体の物流システムの最適化にも大きく貢献することになります。

中継輸送の導入に向けた課題

中継輸送には多くのメリットがある一方で、導入にあたってはさまざまな課題をクリアする必要があります。

運用・実務面での課題

中継拠点の確保
ドライバーが日帰り運行可能な距離(発地・着地から250km以内)に適切な拠点を確保する必要があります。しかし、地理的条件や不動産事情によっては、理想的な立地に拠点を設置できないケースも考えられます。

中継拠点に必要な設備要件
車両を乗り換えるための十分な敷地や、「貨物積替え方式」の場合は荷役のためのフォークリフトが必要となります。また、長距離ドライバーは男性が多くを占めますが、女性ドライバー向けのトイレやシャワーといった休憩施設の有無が問われます。

運用ルールの徹底
車両の互換性(トレーラー方式を採用する場合)、さらに異なる事業者間での交換の場合は、荷扱いのルールや納入要領、受付場所などを事業者間で正確に共有しておく必要があり、綿密なコミュニケーション体制の構築が求められるでしょう。

コスト・リードタイムの課題
従来の幹線輸送と比較して、高速道路料金、中継拠点の利用料、新規の保険料などの直接的なコストが増加する傾向にあります。また、中継拠点で車両の受け渡しや点検、書類の交換作業が発生するため、目的地への到着までのリードタイムが長くなるケースもあります。こうしたコストやリードタイムの増加について、荷主企業の理解と協力を得られにくいことが導入の壁となっています。

法制・管理・契約面の課題
異なる事業者間で運行する場合、責任関係の不透明さが課題となります。事故が発生した際の報告責任、損害賠償の範囲、車両整備の責任、保険適用の範囲などを事前に詳細に決めておく必要があります。 また、労働時間削減による賃金低下を防ぐ新たな評価制度の構築や、複雑化する運行管理への対応も必要となります。

中継輸送の事例

中継輸送は、すでに多くの企業や物流事業者によって実践されています。

デンソー・三井倉庫ロジスティクスの事例

株式会社デンソーと三井倉庫ロジスティクス株式会社は、2024年11月から幹線中継輸送サービス「SLOC」を活用した 混載輸送の長期実証実験を開始 しました。荷物を積載するコンテナ部分を脱着できるスワップボディコンテナ車両を用いることで、ドライバーの労働環境改善と物流効率化を両立させます。

SLOCの特徴は、スワップボディコンテナ車両を使用することで、事前にコンテナへの混載作業を完了させることができ、ドライバーは中継拠点でコンテナのみを交換することで速やかに出発できるため、 待機時間が短縮できる点にあります。

実証実験では、三井倉庫ロジスティクスの座間事業所(神奈川県)と名古屋事業所(愛知県)を中継地点として、北関東と関西間の輸送を実施しています。 デンソーの独自AIアルゴリズムで複数荷主の荷物を最適に混載し、積載率を向上させる試みや、スマートフォンとQRコードを活用した中継管理システムにより、運行の確実性を高める検証を行っています。

物流プラットフォーム提供事業者の事例

ある物流プラットフォーム提供事業者は、路線固定型の中継輸送を提供しています。確立された幹線輸送スキームを用い、複数の荷主の荷物を集約して共同配送を実施。物流プラットフォーム事業者が主体となり、中継拠点を固定して運用することで輸送効率を向上させています。

3PL事業者の事例

ある3PL事業者は、荷主の要望に合わせて個別に中継輸送スキームを構築しています(個別コーディネート型)。運送事業者は片道のみの長距離輸送を避けられ、ドライバーの労働時間削減につながっています。

中継輸送とSustainaLinkの
物流ソリューション

中継輸送は、ドライバーの労働環境改善や環境負荷の低減など、多くのメリットをもたらす一方で、導入にあたってはコストの増大や拠点確保といった課題もあります。 こうした課題の解決には、物流の専門的なノウハウとトータルなサポートが不可欠です。

三井倉庫グループの「SustainaLink」は、CO2排出量の算定から削減、輸送の効率化、労働力不足や災害リスクに強い物流体制の構築まで一気通貫でサポートします。 陸・海・空のフルスペックの物流機能と豊富なノウハウにより、お客様の課題に合わせた柔軟な物流ソリューションをご提案いたします。

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